ウィスキーセミナーの紹介ページです。

ウィスキーセミナー

  
著作『モルトウィスキー大全』(小学館刊)で名高いウィスキー・ライター土屋守氏のセミナーが名古屋にて開催されました。当ホームページでは特別企画としてこのセミナーの模様を皆様にお届けします。当ホームページへの掲載は土屋守氏ご本人から直接許可をいただき、掲載しています。掲載の許可をいただきました土屋守氏には改めて感謝の意を表します。
  
開催日時:1999年4月3日(土)13:40〜16:00
開催場所:愛知県女性総合センター(ウィル愛知)
講演中の土屋守氏 
写真:講演中の土屋守氏

以下、セミナーの模様をお届けしますが、記事は当ホームページでお伝えしていない
耳寄りな話を中心に掲載します。


<ウィスキーの概要>
世界的なウィスキーの定義は『穀物を原料とした蒸留酒であり、木の樽で寝かせる こと』である。
この定義のどれを欠いてもウィスキーとは呼べない。また、世界のウィスキー生産の95%は
「五大ウィスキー」が占めており、ウィスキーといえば五大ウィスキーといっても過言ではない。
グレーンウィスキーの蒸留所で操業中のものは8つある。モルトウィスキーと違い、
味わいの違いはほとんどなく、グレーンウィスキーのテイスティングは意味を持たない。
  
<モルトウィスキーの製法>
原料となる大麦には大きく分けて二条大麦、六条大麦があるが、モルトウィスキーで使用するのは二条大麦である。
一口に二条大麦と言っても種類は大量にあり、蒸留所により使用する種は異なっている。
多くの蒸留所では大麦の種によってできるウィスキーに変わりはないとしており、
いろいろな種を混ぜているところが多い。 しかし、中にはこだわりを持つ蒸留所もあり、
例えばマッカランではゴールデンプロミス種しか使用していない。
ちなみにこのゴールデンプロミス種は育てる農家が減っており、マッカランではついに自作をはじめたそうである。
  
<モルトウィスキーの個性を生み出す要因>
○大麦の品種
上述のごとく二条大麦は多種あり、使用する大麦により個性が生まれる。
○水

仕込用水の水質により個性が生まれる。水は蒸留所が成り立つ非常に重要な要素で、
水が枯れたために閉鎖せざるを得なかった蒸留所もある。
スコットランドの水は大部分が軟水だが、日本の水と比べるとやや硬い。
日本でも市販されている「ハイランド・スプリングス」の硬度は約140だが
「六甲のおいしい水」は83である。大部分の蒸留所は軟水を仕込用水としているが、
グレンモーレンジ、ハイランドパーク、スキャパ等は硬水を使用しており、
硬水だからといってダメという訳ではない。
また、瓶詰段階での度数調整にはニュートラルな蒸留水を使用しているところが多く、
この段階では味を変えないようにしている。

○製麦工程
現在、蒸留所自身で製麦(モルティング)しているところはバルヴェニー、ベンリアック、
ハイランドパーク、ボウモア、ラフロイグ、スプリングバンクなど数えるほどしかなくなった。
まず、製麦をどこでやっているかにより個性が生まれる。また、製麦工程で最も重要なのは
ピートの炊き方である。これが最も個性を生む。炊き方の例を以下に挙げる。

(1)ボウモア蒸留所
乾燥時間は合計40時間。その内、ピート乾燥は18時間、熱風乾燥:22時間。
(2)バルヴェニー蒸留所
乾燥時間は合計48時間。その内、ピート乾燥は24時間、無煙炭乾燥:24時間。
なお、スプリングバンク蒸留所では通常のスプリングバンクはピート乾燥6時間だが、
ロング・ロウではなんと55時間もピート乾燥させるそうである。
製麦を自蒸留所でやらないところもそのピートの度合いは各蒸留所で厳格に決
められており、製麦業者(モルトスター)にレシピを言い渡してある。ピートの度合い
はppmで標記される。以下に例を挙げる。
 <1>1ppm マッカラン蒸留所
 <2>35ppm ラガヴーリン蒸留所、ラフロイグ蒸留所
 <3>55ppm アードベッグ蒸留所(アードベッグは一時期ピートの度合いを落とし
   ていたが、グレンモーレンジに買収された後、55ppmに戻している)

○イースト菌
発酵に使用するイースト菌の違いにより個性が生まれる。

○発酵漕
発酵漕の材質、大きさなどの違いにより個性が生まれる。発酵漕は多くの蒸留所では
オレゴン・パインなどの木製のものを使っているが、ステンレス製の発酵漕を使用している蒸留所もある。

○蒸留方法
主にポット・スチルの形、大きさの違いにより個性が生まれる。ポット・スチルは
各蒸留所によって形、大きさが微妙に異なり、どれひとつとして同じものはない。

○樽
熟成に使われる樽の違いにより個性が生まれる。バーボン樽、シェリー樽、
プレーンオークなど使用した樽によって違った個性が出来上がる。
  

<スライド>
蒸留所やスコットランドの風景を写したスライドを見せていただいた。
ここで紹介されたスライドの内いくつかは土屋守氏の新著『ブレンデッドスコッチ大全』(小学館刊)
に掲載されており、美しい写真をこの本でも見ることができます。また、この本は
ブレンデッド・ウィスキーに関する著作ですが、モルト・ウィスキーの資料としても
非常に役に立つのでご一読されることをお薦めします。
質問に答える土屋守氏 
写真:熱心な愛好家の質問に答える土屋守氏